エンジンのピストンリングは消耗品です。長く使えばそれだけ摩耗してくるのだと思いますが、実際のところ走行距離でどれくらい変わるのでしょうか。気になったので手もとにある3組のピストンとピストンリングを比較してみました。
比較対象
今回比較するのはスーパーカブ50(JBH-AA01)インジェクション仕様のエンジン(AA02E)から取り出したピストンリングです。
摩耗具合を比較するのに以下の3組を用意しました。いずれも走行距離はメモが無くてざっくりとした値です(記録はしっかり取っておかないと駄目ですね、反省)。
- ピストンA:走行距離約3,000km
- ピストンB:走行距離約10,000km(中古で購入した予備エンジンのもの)
- ピストンC:走行距離約25,000km(中古で購入したプレスカブのもの。思い切り焼き付いてます)
比較方法
ここでは以下の項目について比較してみました。ちなみにクリアランス測定はサービスマニュアル記載事項ですが、残り二つは思い付きです。
- 合口のクリアランス
- 表面の状態
- 重量
結果
ピストンリング合い口のクリアランス
丁度使っていないシリンダーがあったので、そこに各ピストンリングを嵌めて合い口のクリアランスを隙間ゲージで測定しました(測り方が下手くそなのでかなりざっくりした値です)。
ピストンリング | Top[mm] | 2nd[mm] |
ピストンA(3,000km) | 0.15 | 0.15 |
ピストンB(10,000km) | 0.15 | 0.24 |
ピストンC(25,000km) | 0.24 | 0.35 |
サービスマニュアルによるとトップリング/セカンドリングは使用限度0.5mmで、これを超えると要交換です。
測定結果を見るといずれも使用限度内ではありますが、走行距離が伸びるにしたがって摩耗により合い口が広がっているのが分かります。サンプルの数が少ないので確実ではありませんがセカンドリングの方がクリアランスが大きいです。もしかするとオイル管理が悪いせいかもしれません(特にピストンC)。
ピストンリング表面の傷
これは数値には出来ないのでUSBマイクロスコープを使って各ピストンリング表面の写真画像を見比べることにしました。
トップリング
焼き付いたことのあるピストンCでは摺動面に深い傷がありました。シリンダ圧縮が下がるわけですね。
ピストンA(3,000km) | ピストンB(10,000km) | ピストンC(25,000km) | |
リング 側面 (top) |
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リング 側面 (bottom) |
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摺動面 | |||
内側 |
セカンドリング
セカンドリングは側面上下の写真が入り混じっているかもしれません(外したときに印付けるの忘れていて分からなくなってしまいました。。。)
ピストンA(3,000km) | ピストンB(10,000km) | ピストンC(25,000km) | |
リング 側面 (top) |
|||
リング 側面 (bottom) |
|||
摺動面 | |||
内側 |
重量
最後にピストンリングの重量比較です。流石に私が持っている測りで重さに影響するほど削れたということは無いようで、全てほぼ同じ値ですね。
ピストンリング | Top[g] | 2nd[g] |
ピストンA(3,000km) | 1.11 | 1.09 |
ピストンB(10,000km) | 1.12 | 1.11 |
ピストンC(25,000km) | 1.11 | 1.09 |
所感
さすがに焼き付いたエンジンのピストンリングは爪先が引っかかるレベルの傷があって駄目でしたが、他のはピストンリング合口を測ってみると走行距離に応じて摩耗はしているものの許容範囲でした。この調子だとオイル管理さえしっかりとしていれば50,000kmくらいは大丈夫なのではないでしょうか。また、トップリングよりセカンドリングの摩耗が大きいの意外でした。これもオイルの状態が影響しているのかな?
参考
この記事は以下の内容を参考にさせて頂きました。
- HONDA スーパーカブ50サービスマニュアル(JBH-AA01)
やはり世界を引っ張るハイブリッド日本車の技術力の前に、EVシフトは不調をきたしていますね。特にエンジンのトライボロジー技術はほかの力学系マシンへの応用展開が期待されるところですね。いくらデジタルテクノロジーを駆使しても、つばぜり合いは力学系マシン分野がCO2排出削減技術にかかってくるのだとおもわれます。
プロテリアルのSLD-MAGICの開発者の話ですね。百年に一度の発明には百年に一度の革命的科学理論の裏付けがあったわけですね。
PCX150 56000Km走行です。オイルは3000Km毎に交換しています。交換はしたいのですが費用的に高額になると思いますので、もう少し乗ってみたいのですが故障してからは遅いので、それらリング交換の症状なんか解りますか。
ダイセル リサーチセンターの久保田邦親博士(工学)のCCSCモデル、結構かんがえさせられたわ。一読おすすめ。
すごく詳細なデータで、参考になりました。最近私のスーパーカブのピストンリングを交換したばかりだったので😀
こんにちは。
思い付きの記事ばかりで恐縮ですがお役に立ててなによりです。ピストンリングの摩耗は焼き付きでもしない限り目視では分かり難いですが、クリアランスを測ってみるとしっかりと摩耗しているのが分かりました。次は50,000km(新聞屋さん?)走ったピストンリングも見てみたいですね。
(ps)
ガレージのロッカーいいですね。パーツ類の保管場所に私も考えてみようかな。。。