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[カブ] FIカブ50のシリンダー流用によるボアアップ(50cc -> 97cc)

スーパーカブ50はインジェクション仕様となってからシリンダー形状等が変更になり、今まであった豊富な社外パーツ(キャブレター仕様車用)が使えません。しかし、私の愛車である2008年式カブ(エンジンカバーが黒いやつ)はECU制御へ移行の過渡期的なものなおかげか腰下パーツは互換性があります。大きく違うのはシリンダーから上だけ。では精度や耐久性度外視で動くだけなら加工すればいけるのではないでしょうか。ということでカブ90用ボアアップシリンダー(排気量97cc)をFIカブ50に装着してみました。

 

最初に

この記事はFI仕様のスーパーカブ50(2008年式)に安価なキャブレター仕様のボアアップシリンダーをくっつけて動かそうという実験的な試みです。記事内容には誤りが含まれる可能性が大いにあります。もし本記事をもとに何か行動を起こし結果として何らかの損害を負われたとしても一切責任を負いかねますのでご承知ください(まぁ、ほとんどの人はこんなことやらないと思いますが、念のため)。

 

環境

ベースとなる車体は新聞屋さん仕様なプレスカブ50です。実験的な要素が大きいので、エンジンはヤフオクで同じ形式のエンジンを改造用として入手してきました(以前から改造の検討やパーツ取りに使用しています)。組み付けるシリンダはカブ90用としてヤフオクで出品されていたもので、シリンダー/ピストンやピストンリングがセットになって2000円くらいでした。このシリンダーはカブ90用なのでクランクシャフトもストロークが長いものが必要になります。そちらもヤフオクで安価な互換品を入手しました。

ヘッドについては元々のFIカブ50のものを使用します。本当はもっと大きなヘッドに変えたいところなのですが安価に流用出来そうなものを見つけることが出来ませんでした。予算に余裕があるなら武川のRステージヘッドとか良さそうに思えますが今回は断念です(まぁ、お金あるならこんな改造しないとは思いますが・・・)。

  • 車体&エンジン:プレスカブ50(2008年式FI仕様JBH-AA01)
  • 改造して組み付けるシリンダー:社外カブ90ボアアップ用シリンダー ヤフオク中華シリンダー(約2000円)
  • クランクシャフト:ヤフオクカブ90互換クランク(約1500円)
カブ(JBH-AA01)エンジン
ベースとなるカブ(JBH-AA01)エンジン

 

97ccシリンダー(内径50mm)
97ccシリンダー(内径50mm)

 

カブ90互換クランクシャフト
カブ90互換クランクシャフト

また、今回のボアアップが上手くいけば、排気量は以下のようになる予定です。

  • オリジナル(JBH-AA01)の排気量:内径39.0mm x 行程41.4mm = 49.430cc
  • ボアアップ後の排気量(予定):内径50.0mm x 行程49.5mm = 97.143cc

 

使用した工具等

エンジンの分解/組み立てを行うのでフライホイールプーラーやロックナットレンチ等が要ります。それらに加えて以下のものを使用しました。

  • ヤスリ(ホームセンターでセット売りしている精密ヤスリ)
  • サンドペーパー
  • BSフラップホイル(#60)
  • 電動ドリル
  • リューター
  • JB Weld
  • アルミ板1mm厚
  • アルミ平行板3mm厚

残念ながら私は溶接やロウ付けの技術/設備を持ち合わせていないので、加工はヤスリで削って形を整え、穴が空いたり足りない部分はアルミ板をエポキシ系接着剤(JBウェルド)でくっつけることで対処することにしました。エンジンに接着剤って走行中にぽろっといかないのかという不安は多々ありますが(耐油性、強度はそこそこあるらしい)、まずはエンジンが組みあがって動く状態にまで持っていくことを主目標としたいと思います。

JBウェルド
JB Weld(並行輸入品で少し安かったです)、こいつでアルミ板を接着します
アルミ板(厚み1mm/3mm)
アルミ板(厚みは1mm/3mm)、こいつでフランジ拡張と穴埋めをします

 

FI仕様とキャブレター仕様の差異

以前に流用検討したときの記事にも記載しましたがシリンダー形状が大きく変わっています。流用するならば、以下の箇所をどうにかしなくてはなりません。

  • スタッドボルト穴の間隔
  • オイルライン(オイルが通るスタッド穴が変更、リターン経路の形も異なる)
  • オイル温度センサーの有無

以下にシリンダー寸法をトレースしたものを掲載します。

FIカブ50(JBH-AA01)のシリンダー寸法
FIカブ50(JBH-AA01)のシリンダー寸法

 

ヤフオクボアアップシリンダー(97cc)の寸法
ヤフオクボアアップシリンダーの寸法、スタッド位置がかなり違うのがわかります

試しに予備エンジンを分解してクランクケースにカブ90互換シリンダーをのせてみました。ボルト穴の間隔が違っていて入らないのでスタッドボルトは抜いてあります。クランクケース穴は加工無しでシリンダーを挿入出来ましたが、スリーブとの間にクリアランスはほとんどありません。見てみるとスタッド穴の間隔が異なり、ひとつはシリンダーのフランジから完全にはみ出しているのがわかります。

FIカブ50クランクケースと97ccボアアップシリンダー
ボアアップシリンダーをクランクケースに乗せてみたところ(シリンダーはまだ加工途中のやつです)

 

FIカブ50クランクケースと97ccボアアップシリンダー
クランクケース側のスタッドボルト穴がはみ出ています

カムチェーンが通る長方形の穴もサイズが変わっていました。クランクケース側から覗き込むと光がうっすらと差し込んで見えるくらいギリギリ穴が見えないレベルです。後で分かったのですが、これはFI仕様でカムスプロケットの丁数が変更となりサイズが大きくなっていたことが原因のようです。

FIカブ50クランクケースと97ccボアアップシリンダー
カムチェーンが通る穴のサイズが異なります。辛うじてシリンダー側のフランジが隙間を塞いでいる状態で、光がうっすらと差し込んでいます

そして、オイルラインとなるスタッド穴が変更されています。またヘッドからクランクケースに戻るラインの形状も異なります。この経路中にはオイル温度センサーが追加されています。オイルラインはなんとかするとして、オイル温度センサーを同じように着くよう加工するとなるとかなり手間を要しそうです。サービスマニュアルを参照してみるとオイル温度センサーが無い場合は冷間時のエンジン始動性が悪化する可能性がある、とのことでした(チョーク的な役割?)。無くてもエンジンは動きそうなので、今回はオイル温度センサーは省略することにします。

 

シリンダーの加工

加工した部位毎に紹介します(実際のところ試行錯誤だったので順番が前後している箇所があります)。

スタッド穴を広げる

ともかくシリンダーがつかねば始まりません。まずFIカブ50のシリンダー形状をスキャナで取り込んだものを印刷してボアアップシリンダーにあわせ、どう削ったらいいか下書きします。

FIカブ50シリンダーの型紙作り
スキャナで取り込んだFIカブ50シリンダー形状を使って型紙を作ります(内径はボアアップシリンダーに合わせて直径50mmの穴をあけます)

 

ボアアップシリンダー流用加工のためケガキ
ボアアップシリンダーに型紙を合わせて加工目標のケガキをいれます

 

ボアアップシリンダー流用加工のためケガキ
かなり削らねばなりません

あとはスタッドボルトを通すべくFIカブ50にあわせてスタッド穴をひたすらヤスリで拡張します。アルミシリンダーなので小さいヤスリでも削れました。ただ、やっぱり時間がかかるので目の粗いヤスリがあると多少早く削れるかもしれません。

幸いFIカブの方がスタッド間隔は広く、シリンダー穴とのクリアランスは気にしなくて済みます。ただ、ごりごり削っていくと結果的に2本のスタッド穴でシリンダー側面に穴が空くことになりました。これは後で対処します。

シリンダー加工(スタッド穴の拡張)
シリンダーをひたすらヤスリで削ります

 

シリンダー加工(スタッド穴の拡張)
案の定、側面を突き破って穴があいてしまいました。ここはオイルラインなので後ほど対処します

オイルライン切削

カブはシリンダーのスタッドボルト穴を通ってヘッドまでオイルが送られています。この通る穴がFIカブ50で変更されています。これもシリンダーに溝を掘ってオイルラインを作ってやることにします。ヘッドからオイルが戻る経路についても形状が異なるため加工します。私の場合、もともとあった穴をアルミ板で埋めてからドリル/ヤスリを使って穴を開け直しました。

また、クランクケース側のオイルリターンとなる穴やオリフィス位置も微妙にズレているので、シリンダー側の穴を広げて対応します。

FIカブのシリンダー流用加工(オイルライン切削)
溝を掘る場所をマジックでケガキます

 

FIカブのシリンダー流用加工(オイルライン切削)
ドリルを使って大ざっぱに溝を掘ってからリューターを使って仕上げます

キャブレター使用カブのオイルリターン形状
このオイルリターンとなる穴の形状が異なります
FIカブのシリンダー流用加工(オイルリターン経路の加工)
1mm厚のアルミ板を丸くざぐってあるところに上手く嵌るように切り出して削ります

 

FIカブのシリンダー流用加工(オイルリターン経路の加工)
JB Weldでアルミ板を接着します

 

FIカブのシリンダー流用加工(オイルリターン経路の加工)
硬化したらスタッド穴加工で使った型紙を合わせて罫書きします。ヘッドの形状も確認して穴をあけるおおよその位置を決めました

シリンダー流用加工(オイルリターン経路の加工)
オイルリターンとなる経路をドリルを使って加工します。丁度このあたりに穴をあけていくと元々あったオイルリターン経路と合流出来ます

 

FIカブのシリンダー流用加工(オイルリターン経路の加工)
ヘッド側との段差を少なくするため入口付近をヤスリで広げています

 

R0012394.JPG
クランクケースと繋がるオイルリターンの経路を罫書きます。ここはベースガスケットを当ててみると分かりやすいです(ガスケットを加工しなくても押し込めました)

 

FIカブのシリンダー流用加工(オイルリターン経路の加工、シリンダーのクランクケース側)
ドリルで大雑把に穴をあけてリューターで削りました

 

FIカブのシリンダー流用加工(オイルオリフィス、シリンダーのクランクケース側)
オイルオリフィスの位置も微妙にずれているようです

(追記)

その後、オイルリターン経路のクランクケース側を再加工しました。やはり手抜きは拙かったらしくこの部分からオイルがぽたぽた漏れていたのでその対策です。

R0013533.JPG
クランクケース側の形に合うように開口部をアルミ板で塞ぐことにしました。ざっくりとした形にヤスリで整えます。

FIカブのシリンダ流用加工(オイルリターン経路の加工)
大きめに作ったアルミ板をあて木してハンマーで叩きこみました。隙間にはお馴染みJB Weldを流し込みます(食いつきをよくするためにヤスっておいた方がいいと思います)。

FIカブのシリンダ流用加工(オイルリターン経路の加工)
仕上げにオイルストーンで磨きます。

シリンダー側面の穴埋め/フランジ拡張

スタッドボルトが通るくらいまで穴をあけるとシリンダーに穴が空いてしまいます。しかもそのうち1本はオイルラインを兼ねているため絶対に塞がなくてはなりません。また、クランクケースと接触するフランジも幅が足りなくてネジ穴が見えてしまう箇所がありました。

溶接出来れば一番だと思うのですが、私は設備も技術もありません(でも、いつかやってみたい)。次点でロウ付けですが、アルミのロウ付けはかなり難しいうえに部材が結構お高いです。色々と悩んだ末、正直上手く行くか自信がなかったのですがエポキシ系パテを使うことにしました。候補は以下の2つです。

  • JB Weld
  • GM-8300

JB Weldはエポキシ接着剤で耐熱性、耐油性があります。硬化すると濃い灰色になります。硬化時間は長く24時間とあります(速乾タイプもありますが強度は落ちる模様)。お値段は26.8gで1300円くらい(並行輸入品はもう少し安い)。

GM-8300も同じくエポキシ系です。アルミパテとのことで耐熱性/耐油性があり用途的に一番あっていると思います。硬化後に研磨すると周囲のアルミと区別がつかないくらいだそうです。また硬化時間は短いです。お値段は44g入りが3000円くらい。

今回は可能な限り安価にボアアップを目標にしたいと思いますのでJB Weldを使うことにしました。私は不器用なので硬化時間が長く手直ししやすいのもポイントです。

JB Weld
JB Weldは混ぜると灰色になります。完全硬化まで24時間

パテだけだと強度が不安なのでアルミ板を継ぎ接ぎすることにします。フランジの長さが足りない部分は放熱板の上にアルミ板を積み重ねて高さを揃えます。最後はオイルストーンで面を揃えてやればガスケットで押さえられるはずです。側面に空いた穴はうまい具合に放熱板の間なので、この間にアルミ板を押し込んでパテでくっつけることにします。

アルミ板の切断
アルミ板をかな鋸で適当なサイズに切断

 

アルミ板
切り出したアルミ板をヤスリで形を整えます

FIカブのシリンダー流用加工
穴を拡張したせいでフランジがきれてしまいそうです(しかもこの穴はオイルライン)

 

FIカブのシリンダー流用加工
接着面をヤスって荒らしてから脱脂してJB Weldを使ってアルミ板を接着します。固まるまで時間がかかるのでズレないようマスキングテープ等で固定したほうがいいかもしれません

FIカブのシリンダー流用加工
シリンダー側面には大穴があいています

 

FIカブのシリンダー流用加工
アルミ板を二枚重ねにして放熱フィンの間に押し込みました。隙間はJB Weldを盛って塞ぎます

加えて、実際の加工順序とは前後してしまいますがオイルライン経路切削等の加工を行った結果としてフランジの厚みが非常に薄くなってしまった箇所があります。ガスケットで押さえるとはいえオイル漏れのリスクを少しでも改善するためにアルミ板を組み合わせてフランジを拡張しました。

FIカブのシリンダー流用加工、フランジ拡張
オイルラインとスタッドボルト近傍のフランジを拡張しています。こいつとガスケットがあればオイル漏れを防げる・・・はず(実際のところ液体ガスケット必須でした)

 

FIカブのシリンダー流用加工、フランジ拡張
ここも念のためフランジを拡張しておきました。こちらはエンジンの上側になるのでもしかすると無くても大丈夫かもしれません

 各部の接着剤が完全に硬化したあと、拡張したフランジとシリンダー面がフラットになるようにヤスリがけします。ある程度削って平坦っぽくなったらオイルストーンを使って表面をならしました。

FIカブのシリンダー流用加工、オイルストーンで研磨
オイルストーンで仕上げます

 

FIカブのシリンダー流用加工、シリンダーのヘッド側
一通りの加工が終わったシリンダー(ヘッド側)

 

FIカブのシリンダー流用加工、シリンダーのクランクケース側
同じくシリンダー(クランクケース側)

ヘッドガスケットの加工

ヘッドガスケットはボアアップシリンダーにも付属しますがスタッド穴間隔やオイルライン形状の問題で使用が難しいです。そこでカブ50のものを加工して使用することにしました。

FIカブ50とボアアップシリンダー付属のヘッドガスケット
FIカブ50とボアアップシリンダー付属のヘッドガスケット

 

FIカブ50とボアアップシリンダー付属のヘッドガスケット厚み比較
それぞれのガスケット厚み比較です。全然違いますね・・・

カブ50のものをそのまま使うとシリンダー径が大きくなったためヘッドガスケットが内部に露出してしまいます。ヘッドはカブ50のままなのでもしかしたら必要ないのかもしれないですが、念のためシリンダーに合わせて削ることにしました。加工はリューターをバイスに固定して、手でガスケットを持って回しながら削りました。メタルガスケットは薄いものの硬くてなかなか削れないうえに摩擦熱で熱々になります。時々休憩をはさんで気長な作業となりました。

カブ50ヘッドガスケット
カブ50ヘッドガスケット

 

カブ50ヘッドガスケット(リューターで内径を50mmまで広げました)
カブ50ヘッドガスケット(リューターで内径を50mmまで広げました)

 

クランクケースの加工

今回使ったシリンダーはスリーブの内径が50mm、スリーブの厚みが2.5mmあります。それに対してクランクケース開口部を計測すると55.7mmでした。シリンダーと開口部には最低1mm(つまり直径で2mm)のクリアランスが必要とのことで要加工です。

クランクケースの加工にはホームセンターで買ってきた電動ドライバーの先にくっつけるヤスリ(BSフラップフォイル)のようなものを使いました。これをクランクケースの開口部に押し込み(硬かったのでヤスリを挟んでからクランクケースをネジで締め付けました)、電動ドライバをまわして切削していきます。最初から規定トルクでケースを閉じるとドライバが空回りするかもしれません。私の場合はネジを緩めて少し削ってから締め付けると上手くいきました。ちなみに、分解時にクランクケースガスケットを剥がさずにおいてそのまま挟んだ状態で削っています。

どれくらい削れているのかわかりにくいので頻繁にノギスを当てて計測しながら進めます。

BSフラップホイル(#60)
BSフラップホイル(#60) こいつでクランクケースを削ります

 

クランクケース加工
開口部に押し込み電動ドリルを使って削っていきます

 

クランクケースとシリンダーの突き出し
スリーブは結構奥まで突き出しています

 

クランクケース加工
クランクケースを閉じた状態で加工を終えたところです。まだ奥のほうに削り残しがあるので、シリンダースリーブが入るところまで削ります。

 

クランクケース加工
ちなみにクランクケースを開けた状態で半分づつ加工しようとすると、ケース端にヤスリが強く当たって変な削れ方するのでご注意(開口部の右側エッジが丸くなっている)

 

エンジン組み立て

交換を要した部品

カブ90用のボアアップシリンダーとクランクを流用するにあたって、以下のパーツを交換する必要がありました。なるたけ安価に済むように安い互換パーツがあればそちらを購入しています。入手先はヤフオクとwebikeです。

  • スタッドボルト(カブ100EX用 6 x 198mm)
  • オイルポンプスピンドルとピボット(カブ90/カブ100EX用等)
  • カムスプロケット(キャブレター仕様カブ50用)
  • カムチェーン(カブ90/カブ100EX用84LR)
  • カムチェーンガイドローラー固定用のネジ(キャブレター仕様カブ50用)

スタッドボルトはシリンダーが縦に長くなるためカブ50用だと長さが足りません。カブ100EXのスタッドボルトに交換しました。カブ90のものでも長さは足りるかと思いますが、シリンダーヘッド側ネジの呼び径が異なります(FIカブ50/100EX:M7, カブ90:M6)。最新モデルのカブ50(JBH-AA04)のスタッドボルトはクランクのストロークが伸びている関係で長くなっていますが、こちらはクランクケース側ネジの呼び径が変更されていて使用できません。

カブ100EX(上)とカブ50 JBH-AA04(下)のスタッドボルト
カブ100EX(上)とカブ50 JBH-AA04(下)のスタッドボルト。残念ながらJBH-AA04のものは使えません
ボアアップとスタッドボルト
スタッドボルトを交換しないで組むとこんな感じで長さが足りなくなります

同じ理由でカムチェーンも長い物に交換です(FIカブ50:82LE , カブ90:84LR)。クランクシャフトの径も大きくなるため、オイルポンプスピンドルが干渉してケースに入らなくなります。これもカブ90の細いスピンドル/ピボットに交換します。

カブ90のカムチェーンとオイルポンプスピンドル/ピボット
カブ90のカムチェーンとオイルポンプスピンドル/ピボット

またFI仕様になってクランクシャフトについているタイミングスプロケットの丁数が変更されています。そのままクランクだけカブ90のものに変えてしまうとバルブタイミングが無茶苦茶になるので、カムスプロケットをキャブレター仕様カブのものに変更しました(FIカブ50:15T/30T->キャブレター仕様カブ:14T/28T)。

キャブレター仕様カブのカムスプロケット(28T)
キャブレター仕様カブのカムスプロケット(28T)

 シリンダーがキャブレター仕様カブのものなので、カムチェーンガイドローラー固定用のネジも変更します。ワッシャーは部品番号が変わっていましたが、注文するのを忘れていて元々の部品を流用しました。

FIカブ50 JBH-AA01のカムチェーンガイドローラ固定ネジ(上)とキャブレター仕様車のもの(下)
FIカブ50 JBH-AA01のカムチェーンガイドローラ固定ネジ(上)とキャブレター仕様車のもの(下)

 

エンジン腰下の組み立て

さて、ようやくエンジンの組み立てです。分解したエンジンを清掃後、購入したパーツを組み込んでいきます。腰下だとクランクシャフトとオイルポンプスピンドルが交換になりました。

カブ、オイルポンプ取り外し
オイルポンプを取り外して、
オイルポンプスピンドル交換とピボット挿入
ピボットを挿入します。あとは元通りにオイルポンプを取り付けます

 

90互換クランクとオイルポンプスピンドル
90互換クランクを取り付けてみたところ。オイルポンプスピンドルは細いタイプに交換済みですが、意外と隙間が無いのですね

 

ミッションとキックスピンドルの取り付け
ミッションとキックスピンドルの取り付け。いつか4速ミッションを入れたいです

 

プライマリードリブンギアとクラッチ取り付け
プライマリードリブンギアとクラッチ取り付け

エンジン腰上の組み立て

続いて腰上の組み立てです。交換する部品は以下の通りです。

  • スタッドボルト
  • カムチェーン
  • カムチェーンガイドローラーの固定ネジ
  • カムスプロケット

スタッドボルトはダブルナットにして取り外しました。同様にして新しいカブ100EXのスタッドボルトを取り付けます。

スタッドボルトをダブルナットで取り付け
スタッドボルトをダブルナットで取り付け

この段階でピストン/シリンダーを仮組(ピストンリングは嵌めていません)してバルブとピストンのクリアランスに問題が無いか、念のため確認してみました。ピストンに粘土を盛った状態でヘッドを規定トルクで固定し、カムチェーンとカムスプロケットを忘れずに取り換えてからクランクを何回か回転させてみます。何かにあたるような感触はありませんでしたが、果たしてとヘッドを取り外してみると・・・うーん、微妙に当たっているような気が。ヘッドガスケットが薄くなったせいもありそうです。ベースガスケット2枚重ねでなんとかなるだろうか。

バルブとピストンのクリアランス確認
バルブとピストンのクリアランス確認

結局その場にガスケットが1枚しかなかったこともあってそのまま組み上げることにしました。いったんヘッドとシリンダーを取り外してピストンにピストンリングを取り付けます。ピストンリングの取り付け方は以下の動画がとても分かりやすく参考になりました。

 

97ccボアアップシリンダー(左)とカブ50(右)のピストン
上面から見た97ccボアアップシリンダー(左)とカブ50(右)のピストン

 

97ccボアアップシリンダー(左)とカブ50(右)のピストン
側面から見たボアアップシリンダー(左)とカブ50(右)のピストン

 

ボアアップシリンダー付属のピストンリング
ボアアップシリンダー付属のピストンリングですが、どっち向きに組めばいいのか分かりませんです。取り合えず刻印のある面を上にして組みます

 

ピストンとピストンリング
なんとかピストンリングが嵌りました

 

ボアアップシリンダー(左)とカブ50(右)のピストンピン
ボアアップシリンダー(左)とカブ50(右)のピストンピン、えらい肉厚になりました

 

ピストンとピストンピンクリップ
付属のピストンピンクリップはe型でした

ピストンをクランクに組み付けたらガスケットを挟んでからシリンダーを挿入します。ガスケットはバルブとピストンのクリアランスが怪しいので厚いのを使うか2枚重ねにした方がいいかもしれません。あるいはヘッドガスケットをもっと厚いやつを自作するとか。またガスケットには液体ガスケットを塗ってから組み込んだほうが無難です(私は何もせずに組み付けてオイル漏れしました)。

(追記)

その後にエンジンをばらして確認したところ、ベースガスケット1枚(厚み0.5mm)だとバルブヒットしていたことが判明しました。圧縮圧力も高過ぎるのでベースガスケットは1.5mm以上あった方がいいと思います。また、丁度ピストンの"IN"の出っ張りに当たるようなのでそこも削ったほうがいいかも。

バルブヒットの痕跡
ピストンにバルブヒットの痕跡がくっきりと。。。

また、本来はシリンダー/ヘッド共にノックピンを使って精密に位置決めされていますが、今回はシリンダー加工によりノックピンが使用出来ません。つまり位置合わせは組み付ける人(私)の感です(今回の加工で一番信頼性が損なわれそうなところだと思います)。

シリンダー組み付け
オイルだぼだぼにしてシリンダーを組み付けます

 

シリンダーヘッドの組み付け
ヘッドを組み付けてカムスプロケットの上死点位置をあわせます

ヘッドカバーを閉めてようやくエンジンが組みあがりました。

 

ボアアップしたFIカブ50のエンジン
ようやく組みあがったエンジン

車体にエンジンを載せる

早速、組み上げたエンジンを車体に搭載します。サイズはシリンダーが少し長くなっただけですが、この少し長くなったところが曲者です。

まずインテークポートとスロットルボディが繋がりませんでした。もうちょっと、というところまでは近づくのですが、最終的にはエアクリーナーボックスを固定しているネジを外してやるとどうにか繋がりました。ぶらぶらしているエアクリーナーボックスはタイラップか何かで固定しないといけません(いったんエンジンとボルト留めしたあとにエアクリーナーボックスをギュッと寄せるとねじ止め出来そうです)。エアクリーナーボックスとフロントフェンダー間のクリアランスはギリギリセーフです。

カブのエンジンを車体に載せる
エンジンを車体に載せる

 

カブエンジンのインテークマニホールド
インテークマニホールドのボルトが留められない

 

カブのエアクリーナーボックス
エアクリーナーボックスの固定を外してやるとようやくボルトが締まる位置まで持ってこれました

 

カブエンジンのインテークマニホールド
これで繋がった

同様にマフラーのステーにネジが通らず固定出来ません。こちらはステーの穴をリューターで削って広げることで対処しました。ひとまず固定は出来たものの、かなり端まで削ってしまったので強度が心配です。何か補強したほうが良さそうです。

カブ、マフラーの取り付け
マフラーが固定出来ない

 

マフラーステーの加工
リューターを使ってマフラーステーの穴を広げることにしました

 

マフラーステーの加工
これくらいまで穴を広げました

 

カブのマフラー取り付け
無事、車体に固定出来ました

続いてホーンが固定出来ません。元々はシリンダー上部に固定用のネジ穴が用意されていましたが、新しく組んだボアアップシリンダーにはありません。これは何処か別な場所に移設する必要がありますが、まあエンジンが動くかどうかに比べれば些末なことです。取り合えず適当にぶらぶらさせておくことにします。

また、今回はオイル温度センサーの接続部は作りませんでした。繋ぐところのないケーブルとセンサーはホーン同様にケーブルを何処かにまとめておきます。

R0012539.JPG
R0012527.JPG
省略したオイル温度センサー。ちなみにセンサーをコネクタに接続しないとPGM-FI警告ランプが点灯します。煩わしい人はセンサーを繋いでおけば点灯しません

 

始動テスト

キックするもエンジン始動せず

遂にどきどきのエンジン始動テストです。エンジンオイルを入れてからキーONして、いざキック!キック!キック!が、想像通りといいますかエンジンがかかりません。圧縮はあるし(かなり重たくなりました。適当にキックするとクラッチが滑っている感じがします)、キックした瞬間はボボボという時があるものアイドリングすらしません。

この段階でコンプレッションゲージで圧力を見てみました。暖気も出来ていない上に私のヘロヘロキック20連発(くらい)なので参考程度ですが、ゲージを見ると約17kgf/cm2くらいありました。サービスマニュアルによると標準値が14kgf/cm2なのでかなり高い数値です。そりゃシリンダー容積がほぼ倍になって燃焼室容積が同じなので高くもなるはずです。

コンプレッションゲージで圧力測定
コンプレッションゲージで測ってみたところ

簡易インジェクションコントローラで燃料噴射を増量する

現状、ボアアップで容積がほぼ2倍になったのに対して燃料噴射量は50ccの時のままです。こいつを増やせばアイドリングくらいはなんとかなるかもしれません。お手元に市販のサブコンなどお持ちの方はそれが利用できますが残念ながら我が家にはありません。そこで家に転がっていたArduino nanoを使ってなんちゃって簡易インジェクションコントローラを作成して再試行することにしました。

簡易インジェクションコントローラのテスト
ブレッドボードに回路を組んで燃料増量を図ります

いざインジェクションコントローラを繋いで燃料噴射時間を増やしてキックしてみると・・・エンジンが始動しました!

噴射時間を増やしたり減らしたりしてみて、どうやら1msec増くらいでなんとか始動するようになり、2msec増にするとキック一発でエンジン始動出来るようです。アクセルを開くとエンストせずに回転数が上がります(ギアはニュートラル)。

おお~と感動していたのですが、しばらくアイドリングしているとエンジン周辺から白煙があがってくるではないですか。何事かとみるとどうもオイル漏れしているようです。場所はクランクケース/シリンダー間のオイルリターン経路付近とシリンダー/ヘッド間の同じくオイルリターン経路付近のように見えます。やはりガスケットと液体ガスケットを併用したほうが良さそうです。

R0012569.JPG
アイドリング中にオイルが漏れて白煙があがってきました。やっぱり液体ガスケットを使うべきでした

 

カブのオイル漏れ
ヘッドからのオイルリターン経路が怪しいです

 

所感

凄まじく行き当たりばったりな内容ですが、なんとかエンジン始動までたどり着くことが出来ました。カブ90のボアアップシリンダーをFIカブ50に加工して無理矢理くっつけるというネタ、構想そのものは昨年からあったものの要加工ということで一歩を踏み出すのが遅くなりました。

元々は小型二輪免許を取ったはいいがFIカブのボアアップキットが高い、もうちょっと安くならないかなぁという個人的な欲求から始まってヤフオクで安いカブ90用のボアアップシリンダーとクランクを入手したものの互換性が無くぽん付けは無理と判明。なんとかならないものか、という思いから今回の記事が生まれました。今のところアイドリングはしたもののシリンダーとヘッドの位置決めがエイヤッだったりオイル漏れがあったりと信頼性に疑問ありありで実用性は?といった状態です。その後の顛末も"すけログ"でご紹介出来ればと思いますが、ひとまず"ネタ"として楽しんで頂けましたら幸いです。

 

その後

(2018/01/31追記)

その後、ベースガスケット厚みを増やしたりハイオク投入したりと実験してみました。

松尾山登坂というヘビーなテスト環境ということもありますが、100kmほど走ってヘッドを開けてみるとやっぱりノッキングの痕跡がありました(坂道でキンキン鳴っていた)。これは、もう少し下駄をはかせて圧縮比を下げれば改善できるかなと考えています。

あと走らせてみて感じたのが、やはり50ccのシリンダーヘッドがネックですね。エンジンが全く回りません。流石にシリンダーヘッドをヤスリで削るのは無理がありそうですし、社外品は高価です。何か良いアイデアが無いか思案しています。

カブのピストンとノッキング
開けてみるとノッキングの痕跡が。加えてブローバイホースから結構な量のオイルが噴いたようで真っ黒です。

カブのシリンダーヘッド
ヘッドも真っ黒でした

カブの燃焼室とノッキング
ヘッドの汚れを落としてみるとこんな感じ

 

参考

この記事は以下の内容を参考に記載させていただきました。

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