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ノッキング対策について考える

プレスカブに乗っていて、もう少しのトルクと燃費を兼ね備えたエンジンにしたいなぁとエンジンをいじっています。しかし、トルクアップを狙って圧縮比を上げると登坂時にノッキングが発生します。なんとか改善したくてノッキング防止について考えてみました。

 

ノッキングとは?

よくテストコースに使っている道があります。そこは結構急な上り坂で非力なエンジンとハイギヤードなスプロケットで挑むとパワー不足で速度がどんどん落ちていきます。速度を維持する為にスロットルをがばっと開けると今度はエンジンからキンキンと音が鳴り響きます。ノッキングです。それは分かる(ネットで先輩諸氏の記事や動画コンテンツで勉強させてもらいました)のですが、このノッキングはどういう現象なのでしょうか。

カブとノッキング
ノッキングと思しき痕跡が残るピストン。やはり排気量97ccで50ccのヘッドは無理があったようです。

ネットの情報を色々と読み漁ってみたところ、以下のサイトにある自動車関連のコンテンツがとても参考になりました。研究テーマとしてノッキング等を扱っておられた工学博士の方が書かれたもので、以前は大学のサイトに掲載されていたコンテンツを別サーバに引っ越されたようです。私は今まで碌に学んでこなかった人間ですので「内容を読んで全てを正確に理解出来た」とはとても言えませんが、取り合えずノッキング対策として行っていた「燃料を増やす」や「ハイオクを使う」がどういった意味があったのかが分かってきました。私の書いた駄文より余程面白いので、ノッキングに悩んでいる方は読んでみることをお勧めします。

ここでは私なりに理解したことを書き連ねてみます。

ノッキングに関わる大きな要素として、ガソリンと空気が混じった混合気が燃える際のふたつの時間があります。ひとつは通常のプラグ点火により発生した炎が燃え広がる時間、もうひとつは火種が無いにもかかわらず自着火するまでの時間です。

  • プラグ火花により混合気に点火してから燃焼室の端まで燃え広がるまでの時間
  • 混合気が自着火するまでの時間

これらが以下の関係のとき、ノッキングが発生します。つまり、ノッキングが発生していてそれを抑えたいのであれば、プラグ火花で点火した炎の進行速度を速くするか、自着火までの時間を長くなるよう対策が必要であるということです。

  • 燃焼室の端まで火炎伝播する時間>自着火時間(着火遅れ時間)

また、ボアアップするということは燃焼室が大きくなる=端まで燃焼する時間が長くなるのでノッキングが起きやすくなります。

R0012498.JPG
ボアアップすればノッキングも起きやすくなります。

 

ノッキング対策

燃焼速度を速くするには

プラグ点火から混合気が燃焼室の端まで燃え広がる時間を短縮する方法についてです。燃焼速度は温度、混合気、乱流の強さに依存します。

  • 燃焼速度は温度が高いほど速くなる(圧力はほとんど関係しない、もしくは高くなるほど若干遅くなる)
  • 燃焼速度は混合気の比率(A/F比)により変化する(濃い目の比率1.1あたりがもっとも速く燃え、そこを外れると濃くても薄くても遅くなる)
  • 燃焼速度は燃焼室の乱流が強いほど速くなる
  • オクタン価は燃焼速度に関係しない

エンジン回転数を上げる

「燃焼速度はエンジン回転数に比例して速くなる」そうです(回転数に比例して乱流が強くなるため)。

参考サイトで例に挙げられていたのが、急な登坂でスロットルを開けた時にノッキングが発生したとして、エンジンに加速するだけの力があれば速度=エンジン回転数の上昇とともにノッキングは発生しなくなるということです。逆にパワー不足でそれ以上加速出来ないのであればノッキングは発生しっぱなしということになります。走行中であればローギアに落とす(ギア比によっては速度が出なくなるかもですが)ことで対策出来ます。あるいはスプロケットを交換して減速比を高くするというにもひとつでしょう。

カブのドライブスプロケット
燃費燃費と欲張らずにドライブスプロケットの丁数を落とすべき?

インテークポートに金網を被せてみる(乱流を発生させる)

JUNから販売されているヘッドのインテークポートにはペンタゴンネットという金属の網が追加されています。これの有る無しで燃焼効率が大きく変わるそうです。下記サイトの紹介では燃料の微細化とされていますが、他にも乱流を発生させる=燃焼速度が上がるという効果もあるのでは、と考えています。自作している方もおられるようなので私も試してみたいと思います。

燃焼室にスキッシュをもうける

これも上記と同じく強い乱流を発生させます。ボアアップでシリンダ直径が燃焼室の直径より大きくなったのなら加工することで効果があるかもしれません。

私も97ccにボアアップしたとき(ヘッドは50ccのままでした)に考えたのですが、ヘッドを加工して失敗するとどうにもならなくなるという思いがあってまだ踏み出せていません。

カブの燃焼室
FIカブ50(AA01)の燃焼室です。左右にスキッシュエリアがあるのが分かります。

ツインプラグ化する

燃え広がるまで時間がかかるのであれば複数個所で同時点火してやろうという考えです。
正直なところ加工技術が無いので今すぐは試せないのですが、いつか挑戦してみたいです(エコランでは燃費効率向上を狙ってツインプラグ加工することがあるそうですが、これは高圧縮比+ツインプラグ化しているということかな)。

燃調を濃くする

次項の着火遅れ時間と重複しますが、燃調を濃い目1.1くらいに設定すると燃焼速度が最も速くなります。

 

着火遅れ時間を延ばすには

混合気が火種無しで着火するまでの時間を延ばす方法についてです。着火遅れ時間はガソリンのオクタン価や温度、圧力に関係があります。

  • オクタン価が高いほど着火遅れ時間は長くなる
  • 温度が高いほど着火遅れ時間は短くなる
  • 圧力が高いほど着火遅れ時間は短くなる

燃料にハイオクガソリンを使う

一番手っ取り早いかもしれません。オクタン価の高い燃料は自着火までの時間が長くなります(燃焼速度は変わらない)。レギュラーガソリンよりお財布にやさしくないですがカブ程度(タンクに3Lくらいしか入らない)ならあまり影響ないかも。

ハイオク
ハイオク投入が一番手っ取り早くありますが・・・個人的に出来ればレギュラーで走らせたいのです。

燃調を濃くする

気化熱による冷却を狙って多い目の燃料を噴く方法です。気化冷却により燃焼室の温度が下がれば着火遅れ時間も改善するはずです。市販のサブコンなり自作するなりして燃料の噴射量を調整してやればいけそうですが、当然ながら燃費は悪化するでしょう。また、ある一定以上に濃くすると今度は燃焼速度が遅くなるということに注意が必要です。

DSC_0002.JPG
可能ならサブコンで濃い目にするのも手です。

ウォーターインジェクション(水メタノール噴射)

燃料と一緒に水を吹き込むという方法です。上記の燃料により冷却を水で補助するといった形でしょうか。

古くは第二次世界大戦で航空機に使われ、最近では「BMW M4 GTS」という車両に採用されたようです(記事によると燃費/出力向上効果があるようですが、これは燃料による冷却を行わないのと温度低下により着火遅れ時間が延びたことで点火タイミングを最適な位置に出来た、ということの結果なのでしょうか?)。また、海外では車両に取り付ける後付けキットが販売されている模様。

圧縮比を下げる

シリンダ圧力が高くなると自着火までの時間が短くなるので、圧縮比を下げるのは一つの手段ではあります。ただ、パワーを求めてシリンダ圧縮を高めているので出来れば別な手段を取りたいところです。

点火タイミングを遅くする

車のエンジンに搭載されているECUがノッキングを検出したときにも行っている方法です。ただし遅らせると熱効率が下がるのでトルク/燃費ともに低下します。

マフラーを変えてみる

排気が上手くいかないと燃焼室に高温のガスが残ります。こいつが燃焼室の温度を上げる=着火遅れ時間が短くなる一因となるようなので、ボアアップしたのなら排気抵抗の小さいマフラーに変えてみると効果があるかもしれません。

マツダのSKYACTIVE-Gは排気システムを工夫することで残留ガスを低減しているそうです。

 

所感

ざっと思いつくノッキング対策を挙げてみました。私の思い付きでもあるので方策として間違っているもの、そもそも前提知識に理解に誤りがある可能性もあります。そのうえで、これらを実行するとどうなるか、これから色々と試していけたらと思います。

 

参考

この記事は以下のサイトを参考に記載させていただきました。

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