壊れたコンプレッションゲージのワンウェイバルブを修理してみました。ところが、修理後にシリンダの圧縮圧力を計測したところ修理前の値から大きくずれています。この差はどこからくるのでしょうか。気になったので調べてみました。
所持しているコンプレッションゲージ
私が持っているコンプレッションゲージは以下のセットです。2000円ちょっとの安価なモデルでしたがエンジンメンテナンスで重宝していました。
- ゲージ本体
- ホース
- ストレート/アングルパイプ
- 各プラグ径に対応するアダプタ(4種類)
圧力測定を行うには、ゲージ本体と圧力ホース+適合するプラグアダプタをエンジンのプラグホールに繋ぐか、もしくはストレート/アングルパイプをプラグホールに押し当てて何回かクランキングを行います。そのままだとバルブが開くと圧力が抜けてゲージの針が戻ってしまうので途中にワンウェイバルブがついています。
私はいつも圧力ホースを使って計測していましたが、これのワンウェイバルブが壊れて使えなくなってしまいました。
まず圧力ホースを修理する
壊れたワンウェイバルブ
壊れたのは圧力ホースのワンウェイバルブなので、ストレートorアングルの圧力パイプを使えば一応測定出来ます。しかし圧力ホースだとプラグホールにネジで固定出来るのに対してパイプだと手で押さえつけて測る必要があります。やってみましたが私が下手なのもあってどうしても漏れてしまいまともに計測出来ませんでした。
どうにか修理出来ないか
駄目になった圧力ホースだけ買いなおせれば良かったのですがバラ売りはしていないようです。セットで買ってもそこまで高価ではないですが、勿体ないので出来れば修理したいところ。
まず、圧力ゲージ本体は無事です。問題なのはワンウェイバルブです。圧力ホースのバルブはもう直せそうにないですが、ストレートとアングルの圧力パイプには同じようなワンウェイバルブがついています。ではこの二つを合体させればなんとかなるのでは・・・ということでやってみました。
圧力ホースとパイプを繋げる
やったことはごく単純で、圧力ホースを途中でちょん切りパイプに繋ぎました。
- 圧力ホースを適当な長さで切断する
- 圧力パイプの先についているゴムを取り外す
- 切断した圧力ホースをパイプに捻じ込む
圧力ホースとパイプは思いっきり力を込めれば嵌りました。針金かバンドで固定した方がよさそうですが、今回はまともに使えるものになるかわからなかったのでこのまま試用してみることにしました。
エンジンの圧縮圧力を測ってみる
早速エンジンのシリンダ圧縮を測ってみます。どきどきしながらプラグホールにコンプレッションゲージを繋いでキックしてみると、
一応派手に漏れたり接合部分が外れることもなく測定出来ました。ただ、えらい低い数字です。エンジンの構成的にこんな数字にはならないはずなのですが。。。うーん、いくらキックしても変わらないし。。。
コンプレッションゲージの計測誤差を考える
以前に計測した値と比較してみる
このエンジンは以前(圧力ホースが無事だった頃)にも測ったことがある構成です。その時の結果と比較してみました。すると誤差というにはちょっと大きすぎる差です。半分以下でしょうか。何故こうなったのでしょう。
正常な圧力ホースで測定 | 修理した圧力ホースで測定 |
原因のひとつはワンウェイバルブまでの容積
あまり使わない脳みそをフル回転して考えましたが、要因のひとつとしてプラグホールからワンウェイバルブまでの容積が変化したことにあるのではないかと思います。元々、圧力ホースのバルブはプラグホール直近にありました。それが今回の修理でゲージ直近に移動しています。この圧力ホース容積の変化が大きな影響を与えているのではないでしょうか。
まず今回計測しようとしているシリンダの圧縮圧力(の理論値)は圧縮比から計算出来ます。
- 圧縮圧力[kgf/cm2] = 1[bar] * 圧縮比^比熱比
(比熱比 = 空気:1.4~メタン混合物:1.3)
次に圧縮圧力を計算するうえで重要なパラメータとなる圧縮比はエンジンの燃焼室容積/排気量から計算出来ます。
- 圧縮比 = (燃焼室容積 + 排気量) / 燃焼室容積
シリンダ圧縮圧力を測定しようとすると、プラグを抜いてコンプレッションゲージを繋がなければなりません。するとプラグホールからコンプレッションゲージのワンウェイバルブまでの容積が燃焼室容積にのっかてきます。
- 測定時の燃焼室容積 = 本来の燃焼室容積 + プラグホールからコンプレッションゲージのバルブまでの容積
燃焼室容積が変化すれば、当然ながら圧縮比・圧縮圧力も影響を受けることになります。これがどれくらい影響するのかグラフにしてみました。実際は他の要素(バルブタイミングやピストンリングからの漏れ等)が絡んでこんな高い数値にはなりませんが、傾向として本来の燃焼室容積が小さいほど影響が大きくなっているのが分かるかと思います。特に今回測った97ccカブなど燃焼室が小さく圧縮比が高いのでもろに影響を受けます。
(元データはこちら)
やはりコンプレッションゲージの測定結果は同じ条件で測ったときの相対値や目安として活用するものなんでしょうね。そういう意味では、今回修理したホースも―――表示される数値は少々小さくなってしまいましたが―――使い物にはなりそうです。
圧力ホースの容積
ところで、実際のところ圧力ホースの容積はどのくらいあるのでしょうか。こちらも気になったので測ってみることにしました。
測定方法はホースに水を満杯まで注いで入った水の量から判断します。ただ、今回修理したホースに水を入れると後々使うときに面倒なことになるので、半分に切断した圧力ホースの片割れを使うことにしました。
結果、圧力ホースの容積は約5[cm3]となりました。今回修理したホースだとさらにパイプ分が追加されるます。プラグホールも考えると10[cm3]くらいはあるのではないでしょうか。圧力ホースを短くすればある程度は測定結果が改善出来るかもしれませんね。
所感
コンプレッションゲージが壊れたときはガックリとしましたが、エンジン弄った後のざっくりとした比較には使えるという程度には修理することが出来ました(もうちょっと圧力ホースを短くしたほうがいいかな)。表示される圧力については相対値として割り切れば使えそうです。
また、測定する際には同じ条件(コンプレッションゲージの組み合わせ)でしないと意味が無くなるなぁと改めて感じました。面倒だけど、もう一度カブ50のエンジンでも測ってみるかなぁ。
参考
本記事は以下の内容を参考に記載しました。
メーターに、補正表を貼るっていのはいかが?
おじさん時代は、
超高級測定器類は、みな補正表が付いているのが普通です。
最近のはマイコンプログラム補正ですけれども!!
おお、なるほど!
補正表いいですね、思いつきませんでした。今度測るときまでに作ってみようと思います。
アイデアありがとうございますm(_ _)m