以前にコンプレッションゲージでエンジン圧縮値を計ってみたところ、規定値14kg/cm2のところ6kg/cm2と衝撃的な値が出ました。私の測り方が間違っている可能性はありますがどうも気になります。
動かなくなると困るわけでプレスカブを購入してからエンジンには手を触れていませんでしたが、ついにエンジンのメンテナンスをすることにしました。

まずはケーブル類とマフラーを外す
とはいえ、いっぺんにやるとキツイのでまずはエンジンヘッドに手を付けることにします。
私のプレスカブはインジェクションモデルで、サービスマニュアルを見るにヘッドを取り外すまでなら上手くいけばガスケット類の交換は要らないはずです(あるのはゴムのヘッドカバーガスケットと金属のヘッドガスケット)。
最初にエンジンのセンサー類からケーブルを抜きます。O2センサーからケーブルを抜いた場合にはケーブル交換が必要らしく、センサーには触らず配線をたどってカプラを抜きます(が、結局あとで抜きました)。
次にマフラーを外します。ボルト2本でエンジンにくっついて、予想通りがっちりと締まっています。レンチをかまして持ちてをゴムハンマーでごんごんやって外します。ボルトはさびさびでした。



続いてインテーク側のボルトを外すのですがこいつも硬い。1本は上手く回ったもののもう一つが難物で、結局、電動インパクトドライバで外しました。
ヘッドを外す
ここでヘッドの正面にあるボルトを外します。ボルトは特に固着しておらずすんなり外れました。
中はヘドロのように固まったエンジンオイル(のカス?)が。もしかしてクランクケースも同じような惨状なのかもしれません。。。で、簡単に外れたなぁーと思っていたのがよく見るとゴム製ガスケットが途中から千切れているではありませんか。ヘッドカバーにオイルが滲むとは思っていましたが、犯人はコイツのようです。

カムシャフトを抜くためにオートテンショナーの六角ボルトを外そうとするのですが、ここも硬くしまっていて動きません。結局、この段階でフレームに載せたままでの整備は諦めて降ろすことしました。作業台にエンジンをひっくり返し、ボルトにラスベネをたんまり吹きかけて六角レンチ+ゴムハンマーの打撃によりなんとか外れました。ただ、テンショナーのバネは勢いよく飛び出してきたのですがロッドが抜けません。どこかに引っかかっているのかな。。。

ともかくヘッドを外してみました。パーツをひとつひとつ外していくと、今度はカムシャフトが抜けません。サービスマニュアルによると手で抜けるはずなのですが、うんともすんともです。壊すの覚悟でベアリング部分をドライバー+ゴムハンマーで叩くと少し動きます。そのままコンコン叩いてなんとかカムシャフトを抜き出しました。これ、もしかしてオイル管理がかなり悪かったとか?

ここでバルブが原因で圧縮漏れになっていないか、灯油を燃焼室に注いで確認してみました。結果、しばらく放ってもポート側にはたれてこないようで漏れていないようです。

シリンダーを抜いてみる
ということはピストンorシリンダーが原因でしょうか。シリンダーも外してみることにしました。すると、ピストンの側面に傷がたんまりと・・・!エンジン分解するのはこれが初めてですが、これって焼き付いてたんじゃ・・・?シリンダーにも縦傷が見られます。こいつが圧縮漏れの犯人か。



再起不能っぽいピストンを取り外そうとすると、今度はピストンピンが抜けません。よそ様のブログを参考にM6六角ネジ、ワッシャーと塩ビ管で自作したピストンピンプーラーでピンを引き抜きました。かなり適当な代物でしたが意外と使えます。


抜いたピストンピンを見ると思いっきり抉れております。コンロッド小端部にも傷が。これ、小端部を磨いても駄目かな。。。クランク交換は高くつきますえぇ。



この状態で走っていたのは凄いですが、このエンジン予想以上にボロかったようです。もうここまで来たら腰下もバラすしかあるまい、ということで続きます。
(追記)
えらい時間が空きましたがエンジン腰下の整備を行いました。
今度、SLD-MAGIC開発の関係者の方で現ダイセルの方が立命館で講演なさるらしいですね。
SLD-MAGICの線材は日立金属商事の価格が安いらしい。
二重擬三元系状態図は永遠の憧れですね。
さすが、久保田博士ですね。今後のトライボロジー研究の主流をなす高面圧(低フリクション)境界潤滑をラマン分光を駆使する研究スタイルの原形を作りましたね。ガンダムファンが、モビルスーツ開発のブレークスルー理論だと口々に言っています。機械産業への波及効果も大きい画期的な研究だとおもいます。
かなりお詳しいですね。
私は恥ずかしながら知識不足でほとんど理解できませんでしたが、日立金属HPにSLD-MAGICの論文があがっていました。低フリクション性のメカニズムについて解析されています。
日立金属 > 研究開発 > 日立金属技報 Vol.33(2017年発行)
久保田 邦親,上田 精心,庄司 辰也「低フリクションを実現する自己潤滑性特殊鋼の境界潤滑機構」
https://www.hitachi-metals.co.jp/rad/pdf/2017/vol33_r03.pdf
島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑の原理をついに解明。名称は炭素結晶の競合モデル/CCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象にかかわる広い説明が可能な本質的理論で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後48Vハイブリッドエンジンのコンパクト化(ピストンピンなど)の開発指針となってゆくことも期待されている。
こんにちは。
ピストンピンの軽量化にもなりそうですね。先日に97ccボアアップキットを無理やり付けたときに、ピストンピンが50ccと比較してかなり肉厚&重くなっていて驚きました(そもそも材質が違ったのかも)。今のエンジンには勿体ないけど、もっとまともなエンジンを組めたときに試してみたいところです。
なんか日立金属製のSLD-MAGIC(S-MAGIC)っていう材質、かじりに無敵だという話で
ピストンピンを作ったら最強でした。
なんと、貴重な情報ありがとうございますm(_ _)m
調べてみると、これですか↓
・日立金属 高性能冷間ダイス鋼 SLD-MAGIC(http://www.hitachi-metals.co.jp/products/auto/ml/p19_01.html)
よそ様のサイトでSCM415でピストンピンを製造しているというところがあって、その硬度(参考値)を比較してみると
・SCM415 硬度(321 HBW)
・SLD-MAGIC 硬度(62 HRC)
単位が違うのでSCM415の硬度をこちらのページにある硬さ換算表を参考にしてみると
(http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/futab-sougou/Book/futab-sougou-P0125.pdf)
・SCM415 硬度(34~35 HRC)
うーん、ほぼ8割増しですね。流石、金型に使われるだけあります。
いつか旋盤(と工作室)を手に入れたら私も作ってみたいですねぇ。